日本能率協会セミナー講演録「ASEAN市場で貴社ブランドを育てる」
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2017年 3月 20日 (月) ニュース&プレスリリース by nobu
一般社団法人日本能率協会 アジア共・進化センター主催
「ASEAN市場で貴社ブランドを育てる~”食”業界の成功事例から考える海外展開戦略~セミナーが
2017年3月17日に開催されました。
一般社団法人日本能率協会あいさつ
シンガポールビジネス連盟あいさつ
の後に、
RSMチリオム会計事務所 日本デスク 是松 洋平氏
FTコンサルティング CEO ジョン オン氏
三井住友銀行グローバル・アドバイザリー部 副部長 保坂 宏一氏
の講演があり、最後にお話をさせていただきました。
貴社のブランドをASEANで育てる具体策について
こんにちは 松本と申します。
今日はシンガポールを活用した、「食」分野のASEANへのブランド展開について、
最初にお話しいただいた、是松さんのおっしゃる「オーバーストア」
2番手のジョンオン社長のおっしゃる「ショーケース」の上手な使い方
にも触れながら、
1.既にASEAN展開している事業のリブランディング
2.これから海外へ出ていくブランディング
3.今まだやっても事業の全くゼロから新しく始めるブランディング
について、私たちのご支援した実際の実例をもとにお伝えできればと思います。
まず、皆さんもお気付きの様に、大変なスピードで世の中が変化しております。
ブランディングに関しても、対象となるユーザー層の生活スタイルや情報源のベースが、
日本での常識とはかけ離れています。
日本でも現代の大学生は「黒電話」を知りませんし、テレビの回すチャンネルも知りません。
ASEANの方々は、電車はいきなりICカード、
はじめて所有する電話がスマートホンという実際です
人々に影響を与えるメディアも
随分と違います
テレビの影響力は絶大なのは変わらないところですが、
Facebookの影響力も国によって、途轍もなく大きいのが現実です。
例えばフィリピンにおいては、実はスマホでのFacebook利用は無料で出来ます。データ通信料ゼロ円でFacebookが使えるのです。これはFacebookの戦略なのですが、
ですからフィリピンでは、ネット検索は、「Google検索」よりも、「Facebook検索」の方がトラフィックが上なのです。
そういうように国によって日本や先進国の常識とは違う「現実」があるので、気を付けなければなりません。
日本での実績や日本の本社の常識が通用しない可能性があるというのが現実です。
とくに、Facebookやインスタグラムで拡散しやすいような写真が撮れるということが、重要なのです。
Facebookやインスタグラムで拡散出来る写真が撮れる場としての「店舗」
非常に変な意味ですが、
ネットが重要になるので
リアルビジネスの現場の価値が新たな価値になると思っています。
そこで ちょっとこの数字を見ていただきたいのですが、これは
皆さんがご存知のアメリカの3社の会社のアニュアルレポートから取り出した数字ですが、
商品の売上や利益ではないのです。
それぞれにフランチャイズ展開されていますが、全世界のFC加盟店からの加盟金やロイヤリティなどの売上の金額が
2000億円、一兆円という規模なのです。
これは何の対価か? そうブランドの対価なのです。
しかもこれ、ほぼ原価がゼロなので、粗利に近いのです。
実は、
シンガポールを活用して自社のブランドをASEANに広める
それは良いのですが、
その手法は、果たして「直営」なのか?ということなのです。
海外への展開の仕方には、国によって法規制が違いますが、三井住友銀行さんのお話でも各国の規制の問題をお話しいただきましたが、
何が何でも「直営」や「合弁」ではなく、
「フランチャイズ」「ライセンス」
も、日本では展開していなくても海外展開の手法としては、是非お考えいただきたいのです。
先ほどのスターバックス。これだけ雨後の筍の様に出店しているのもフランチャイズだから出来た技です。それぞれの国にFCが居て、そのヒトモノカネで出店していくのです。
最近は毎年3000店舗、店舗が増えるのです。
そしてマクドナルドの1兆円、スタバの2000億円というのは、ブランドに対する対価=粗利なのです。
ASEANにブランド展開していくのであれば、せめてこのライン、
年間2000億円くらいの粗利が得られるようなゴールを設定して、戦略立案されてはいかがでしょうか?
先ほどのFTコンサルティングのジョンオン社長のスライドに非常に興味深いデータがございました。
ビッグマック係数です。
ジョンオン社長は「ASEANはシンガポールの7掛けだ」とおっしゃっておられましたが、皆さんお気付きのように日本中心に見ると、実はビッグマックの価格はバンコクよりも日本の方が安く、フィリピンやベトナムとも価格差はないということです。
失われた20年25年の間に、外食の単価はむしろバンコクの方が高い!!という実情です。マーケットの見方も大きく変えなければならないと思います。
先日、こんな話を聞きました。先日も先日、今月2日のことです。
「日本で有名だというチェーンに加盟して自国で展開したが、うまく行かなかった。ASEANのどこかの国で1店舗で大成功しているビジネスを自国で展開したい」
「日本のチェーン化技術を技術導入したい。勿論貴社のブランドネームを表に出して」
2017年2月28日、3月2日で開催されたJETRO主催のASEAN外食商談会に参加した複数のASEAN企業オーナーの発言です。
ようは、日本で成功していることよりも、
シンガポールやバンコクで成功している本物の日本ブランドを展開したいという話なんです。
今日はそういう具体策を具体的な実例でお話ししたいと思います。
申し遅れました、
私どもアセンティア・ホールディングスと申します。
数年ほど前に
弊社代表が本を出版しました。
アジアで飲食ビジネスで進出する方法の基礎編のような本です。
アマゾンで買えるとのことです。
弊社代表は、
ジェトロさんのコーディネーターも3年担当しました。2010年からシンガポールに住んでおりまして、サービス業でASEANに進出したいというお話を頂いた時の現地側の相談員としての位置づけです。
またクールジャパン機構に採択された案件のシンガポールでのブランド審議委員会のメンバーにもなっていました。
そして弊社は、ASEANへの第一歩を会員制でご支援する会社です。
立地調査 ASEAN6ヶ国+香港マカオの出店可能なショッピングモールの独自に撮影した画像をもとにした調査
立地確保 実際の立地確保
競合調査 気になる競合の売上情報の調査で
ASEAN→アジア全域、西は中東ドバイから、東はフィリピンまでの出店戦略
コンサルティングではなく、最近知った言葉なのですが「アクセラレーター」=「アクセルを踏む」共に知恵を絞り、走り、汗をかく そんな会社です。
さて、
これから先は弊社の具体的な支援事例をもとにお話をしたいと思います。
先ず、サンマルクカフェです。
ジョンオンさんのおっしゃっておられましたようにシンガポールは「ショーケース」です。サンマルクカフェは、ASEANでのフランチャイズ展開をすることを決めたうえでの出店でした。フランチャイズ展開する以上、ASEAN中からの視察が来るような店をつくらねばなりません。
そこでシンガポールに住む人よりも外国の経営者層に目につきやすいショッピングモールを選ぶことから始めました。
選んだのはVivocityという中心部からは離れた場所にあるショッピングモール。観光地セントーサ島へのロープ―ウェイの駅がある場所です。
しかし、トップバッターの是松さんのお話にあったように「オーバーストア」を理由に出店希望をしていたショッピングモールに出店を断わられかけました。
「スターバックスと何が違うの?COSTAコーヒー(イギリス)と何が違うの?」とサンマルクカフェのことを取り行ってくれませんでした。
日本に300店舗あろうが400店舗あろうが、ショッピングモールのテナント担当からすると、そのブランドを入れることによってショッピングモール全体の業績やイメージがどう変化するのか?に重点が置かれます。
色々検討した結果写真にあるようなスイーツ、パフェに力を入れます。
「チョコクロのサンマルクカフェ」とは違う「食品サンプルを並べるショーケースを設置したパフェの店」という井出達になりました。
当然、Facebookやインスタグラムでの投稿も増え、それがヒットし、日本全店含めてもTOP5に入るような業績になっていきます。
また結果として、シンガポールでヒットしたパフェやショーケースと言ったものが、日本に逆輸入されていったのです。
次は、ばり馬ラーメンです。
こちらは、広島の中小企業が本部です。西日本を中心に当時国内に50店舗程度のFCチェーンであったお店です。
元々牛角の加盟店でもあった会社が、FC本部をするために研究してFCで勝てる業態として作り上げたラーメンチェーンでした。
ASEANでの展開をご提案し、シンガポールに直営店を出店することになります。
選んだ立地は、東京で言うと銀座中央通りのような目抜き通りのオーチャードの延長上で、通りの名前がタングリンと変わって少し行ったタングリンモール。
中心部からも徒歩圏でありながら、車のお客様も狙える立地です。
オープン時400万円台だったお店も、4年目になっても月商900万円台と過去最高月商更新を続けるような右肩上がりの業績を続けるようなお店になっています。
今では、マレーシア、インドネシア、香港、マカオなど海外にフランチャイズお店が10店舗以上になりました。
直営店での投資金額を、フランチャイズ加盟金で十分賄えるような形になっています。
フランチャイズは、投資回収のイメージも変えるのです。
次の事例では、2つの提案があります。
Nail it! Tokyo
一つは、日本でその事業をしている、していないは大きな問題ではないということです。
この事例では、日本でその商売をされていません。
日本での事業とは別に、ASEANの市場を研究し、事業を新たにお越し、最初からフランチャイズ展開をすることを前提に始めたというものです。
2015年10月に直営1号店を出店。
2016年10月にはフランチャイズ加盟店1号店が出店。
今週、フランチャイズの2号店がオープンし、現在、直営6、フランチャイズ2の合計8店舗のチェーンに、スタートから1年半で成長しています。
事業の内容は、ネイルサロンNail it! Tokyoです。
ただ普通のネイルショップではなく、写真に写っている炊飯器のような機械。自動ネイルマシンでして、指一本を50秒ほどでネイルのデザインを描いてくれるものです。
よく、「ITが発達すると無くなる職業」等と報道され、その度に「自分の仕事は大丈夫か?」と気にする発表がありますが、その中で常に無くなる職業のTOP5に掲げられているのがネイリストですが、既にこのような自動化マシンが出ているのです。
Nail it! Tokyoの本部は日本企業で、B2Bの仕事をしています。
本業の関係で上海に進出したものの、顧客企業は尖閣問題等で撤退をする中、地元の一般の人たちの暮らしの変化をまざまざと感じます。
顧客企業のマーケティング情報を得るためにと始めたのがネイルサロンで、ヒットするのですが、競合も多々出てきてあっという間に価格競争。
人件費は上昇する価格競争が激しいで、ビジネスとしての魅力を欠いていきます。
そんな中、「新興国の女性はどこも、美を求めるようになる」というニーズに行きつき、
「自動ネイルマシン」との出会いもあり、自動ネイルマシンを活用した業態を構想し、バンコクでの一号店へとつながりました。
この事例でのもう一つ提案があります。
実は加盟した加盟店が日本企業なのです。
その昔、地方の企業が東京で事業をするように、
静岡県の中小企業が、フランチャイズ加盟店としてバンコクでネイルサロンをする時代なのです。
以上、見て参りましたが、ASEANにおけるフランチャイズ化による様々な進出事例です。
さて、そのフランチャイズを別の角度から見てみたいと思います。アメリカという国が何で世界を席巻しているのか?と言いますと、
ファイナンス
IT
そしてフランチャイズなのです。
世界のフランチャイズトップ10はいずれもアメリカ本部のフランチャイズです。
そしてこの3つに共通するのは、知識産業
知識をお金に替えている
個々に原価があるというものではないビジネスです。
こちらは特許取得数ランキングですが
日本が取得数では国別で一位です。
つまり日本は知識があるけど、知識をお金に替えるということについては得意ではなく、アメリカに大きく水をあけられているということです。
ビジネスの知識をフランチャイズ化する
ビジネスの知識をフランチャイズ化にしてお金に替えるということの重要性は、アジア各国の政府も気付き始め、
シンガポール
韓国
は国を挙げて自国のビジネスのフランチャイズ化。そしてグローバル展開に舵を切り始めています。
スターバックスが瞬く間に世界中に店舗を広げているのも、フランチャイズ化があってのことです。
日本はどの分野で勝っていくのか?
日本は、世界に向けて何で勝てるでしょうか?
ファイナンスでアメリカに勝てるでしょうか?
IT分野、GoogleやFacebook以上の企業を出せるでしょうか?
フランチャイズはどうでしょう?
フランチャイズなら勝ち目があるのではないでしょうか?
ジョンオン社長の講演の中で、「シンガポール国民が母国料理以外で好きな料理は?」というアンケートで7割近くが「日本料理」と答えたという資料をお使いいただきましたように、世界の方々が日本食に興味を持ってくださっています。
また
技術スキル(工業、農業)、食、アニメ、漫画、音楽、ファッションの分野でも、世界は日本を一目置いています。
このような分野の組み合わせで、日本のサービス業をフランチャイズ化するということは、まだまだ可能性があると思っています。
加盟店としての海外展開
最後に、もう一つ情報。
それは、フランチャイズ本部になって世界展開以外に、Nail it! Tokyoの事例でもお話ししましたように「加盟店として」の展開も可能です。
こちらは、写真右はオートバックスです。
マレーシアのオートバックスは日本の加盟企業がマレーシアのマスター権利を取得して展開しています。
また牛角。これはシンガポールの4号店ですが、日本企業です。この企業は日本では牛角に加盟していませんが、シンガポールで加盟されました。
次はタイバンコク。
クルマのガリバー。タイバンコクのガリバー店舗のうち半数くらいは、日本のガリバー加盟店が出店しています。
女性フィットネスのカーブスは、日本でカーブス加盟店をしている本業は水産卸の会社が、タイのマスター権利を取得して本部として展開しています。
ASEAN展開。世界展開。
直営、合弁以外のスキームとして、フランチャイズという手法もご検討いただければ幸いに存じます。