社会課題解決型フランチャイズ
Tweet Check2022年 8月 29日 (月) ニュース&プレスリリース, 事例&実績紹介 by nobu
2022年8月26~27日にアフリカのチュニジアの首都チュニスで開催されたTICAD8 アフリカ開発会議の公式サイドイベントを主催したTOKYO8 GLOBAL。そのアフリカの小規模農業支援フランチャイズの完成までのストーリーをお届けします。
社会の課題を事業で解決する
私たちが真の成長事業とは、「社会の課題を解決する事業」と定義したのは2004年のことでした。
社会の課題は、当然ながら社会の変化によって変わります。
過去の日本において成長した事業とは、それぞれの時代において、大小はありますがその時代の、その社会の課題を解決する事業であったはずです。
また現在、海外の色々な国で成長を遂げている事業は、それぞれの国の発展状況に合わせて今の課題を解決する事業であるとも言えます。
日本の食やサービス業の世界展開を「フランチャイズ展開」という方法で支援するアセンティア・ホールディングスは、2017年の段階で、既に世界17カ国に進出していました。今後の展開の議論をする中で注目したのが、まだ進出していない大陸=アフリカでした。
それ以降、JICAやJETROの勉強会やセミナーに参加しながらアフリカについての学習を開始しました。
丁度ABEイニシアチブというアフリカの若者の人材育成プログラムが日本政府主導で開始されていました。TICADという1993年から開始している日本主導のアフリカ開発会議の2013年の第5回目開催TICAD5にて、当時の安倍首相が決断したアフリカへの若者育成支援事業です。既に民間や政府機関に就職している若者を2年半のプログラムで日本の大学院にて修士号取得の勉強と日本の民間企業で最大半年のインターンシップを行うというプログラムで、1000名を超えるアフリカの若者を日本で教育する壮大なプログラムでした。
私たちは早速そのABEイニシアチブ留学生のインターンシップを受け入れ、実際に彼らと共に仕事をしながらアフリカのリアルを学んでいきました。
2019年に横浜で開催されたTICAD7ではJETROのサイドイベント「ビジネスフォーラム」にて6ブースを使い日本のフランチャイズをアフリカ企業に提案するということに挑戦しました。20名ほどのABEイニシアチブ生に手伝ってもらいながら沢山の関心を集めたものの、実際にアフリカに日本のフランチャイズをそのまま持っていくことは時期尚早だったと思います。2019年秋に商談で訪問したエチオピアとコンゴ民主共和国。確かに首都の中心部は東京に負けないくらいの購買力があり活気ある町であったものの、中心部以外に広がるのは、まだまだ生きることを目標に活動をする多くの市民の生活がありました。日本のフードビジネスフランチャイズ等はまだまだだという事実でした。
そして、私たちは、この国の課題を解決するフランチャイズを模索することを開始しました。2019年末のことでした。
まだまだ飢餓の残る国。食料不足が否めません。人口の7割~8割が農業従事という国、首都以外には小規模農業や家族農業が広がり、そこには多くの課題がありました。
国としての食料安全保障も問題でした。
そして、街には若者に溢れているのですが、若者の旺盛な企業家精神に対応出来得る事業領域の提案が必要だと感じました。
農業生産性向上、食料安全保障、企業家精神、この3つの課題を解決するビジネスを日本から日本の企業の技術やノウハウからフランチャイズ化してアフリカに広げなければならない、我々の目標設定が定まりました。
農業生産性向上のノウハウを持つ日本企業は少なくなく存在します。素晴らしい農家さんも多いです。
JICA等の枠組みも数十年の歴史を持っています。ただ、既存のそれらの枠組みは「無償支援」をベースとしたODA的(政府開発援助)な動きとなっており、国家ベースの話であるケースが多く、私たち民間企業の太刀打ちできるものでは無さそうでした。
他方、無償支援の枠組みでは、相手側が政府機関であるケースが多く、ビジネスとしての継続性が得られにくいという情報も得ておりました。政府間の取り組みも重要だが、民間企業が取り組めるサイズのビジネスの重要性も感じていました。
TICAD7の横浜での体験は、企業家精神はどの国にも存在するということでした。またビジネスチャンスを求めている方々も多く存在するということでした。
農業支援の枠組みを模索する中で、私たちはABEイニシアチブ留学生との交流を深めました。
夏季の2週間ほどのインターンシップと、大学院卒業後の数ヶ月間のインターンシップを織り交ぜて彼らと意見交換をしていきました。その中で感じましたのが日本の若者同様に、アフリカの若者の中にも「社会企業家」を目指す一定の層が居るという事実でした。社会課題解決のための取り組みに関心を持つ方々が一定割合いるということは、フランチャイズ構想に非常にプラスになりました。
彼ら(ABEイニシアチブ生や卒業生)をフランチャイズ加盟店とできるような社会課題解決型ビジネスモデルはどうだろう?ということです。
そんな時に出会ったのが、東京都板橋区の太陽油化という会社でした。
私たちのインドネシアでのビジネスパートナーがジャカルタで開業している日本食料理店「OKUZONO」を介して知り合った日本企業、それが太陽油化でした。
エンジンオイルのリサイクルや東京23区の地下街や高層ビルなどの汚水汚泥の中間処理を手掛ける会社で創業経営者の4人の息子がそれぞれに役割分担して事業を承継している会社でした。
太陽油化は父親の創業した会社が取り組む事業領域が、ことごとく今の言葉のSDGsになることに誇りを持ち、循環型社会実現に向けた企業活動を目指している若い経営者でした。
その会社が本業の汚水汚泥処理の過程で使用する微生物の効用に特化した商品開発の末に、東京8という農業用の植物化製剤を完成させていていました。
汚水汚泥から肥料という流れは、昭和の農地の肥溜めを思い起こせば容易に想像出来るものなのですが、その当時の東京8の販売には苦戦を強いられていました。
肥料として農水省に登録された分類は「汚泥発酵肥料」。汚泥という表示が平成の農家さんたちの二の足を踏み、中々普及にはつながっていないということでした。世のオーガニックの流れに載せるべく、オーガニック資材の登録も進めているものの、どうにかこの商品の発展はないものか?と悩んでいました。
太陽油化と東京8についての会議を進める中で切り出しました。
「アフリカなど海外には、この商品を求めている人たちが沢山いるのですが・・・」最初は世界という突拍子もない話に半信半疑だった太陽油化の経営陣も、具体的な情報をもとにした勉強会を重ねるうちに可能性を感じるようになりました。そこで具体的に私たちの海外のネットワークから関心を持ちそうな海外の経営者とオンラインで商品の説明をすると、次第に海外のニーズが鮮明になって来ました。そして東京8を空輸しての栽培実験が開始されるようになりました。2021年夏のことでした。
また、弊社が受け入れていたインターンシップメンバーとともに太陽油化を訪問した際に、実際の東京8生産プラントの視察を行いました。
東京8は、太陽油化の本業の汚水汚泥の処理に使われています。世界一の人口過密都市TOKYOの汚水汚泥にはあらゆるものが含まれています。その汚水汚泥を瞬時に浄化することのできる「集団微生物」が東京8なのですが、東京8を培養生産している生産プラントを減額後に参加していたインターン生が「自国で生産出来ないだろうか?」と言い出しました。
太陽油化の石田専務は少し考えてから、「可能だと思う」とホワイトボードにプラントの設計図を書き始めました。
IBCコンテナという液体を運ぶ世界標準のコンテナ4基を連結したプラントで、接続には水道工事の資材と技術があれば良い。微生物が生き続けるために酸素供給するのは大きな水槽用のエアーレーション機能があれば良く、電源供給も直流電源とソーラーパネルで可能だ・・・。
プラントというと、数億円の初期投資のイメージになってしまうのですが、スケッチのプラントはどう見ても数十万円の初期投資。
微生物の餌となる有機物を投入する必要があるものの、それで、毎月計算上は3000ℓの東京8を生産し続けることが可能というスケッチでした。
このモデルで、自国の課題である農業生産性の向上が出来るかも知れないと、そのインターン生は目を輝かせながら言っていました。TOKYO8海外フランチャイズの第一歩でした。
(「マイクロフランチャイズ構築へ」つづく)
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